夢の整理整頓2020.2.2(水)
将来やろうと思ってるデカい計画のことを、夢と呼ぶことにした。
日本武道館で、3時間かけて1編の小説を朗読するワンマンライブをする。
全国の映画館でパブリックビューイングする。
TOHOシネマズで、オリジナルの味のポップコーンを売る。
1000人に手紙小説を送って、その手紙小説と、受け取ってくれた人の言葉を、1冊の本にする。
世界に1冊しかない、わたしだけが読める本にする。
文学賞を取って100万円貰って、そのお金で、深居さんの『深海の作り方』を買い占めて、ザビエルみたいにみんなに配る。
あの子が天国にいても読める小説を書く。
小説の弾丸100連発乱れ打ち(3行小説)
1.
彼はいつも死にたがっている。
自分を繕って、いつも笑っている。
人の賑わう街角の交差点で、信号待ちをしている彼をみつけた。
2.
自由が欲しい。
昼過ぎまで寝ていて、夕方から今日もバイトがある。
穏やかに暮らしたい。
3.
猫の騎士がいた。
猫じゃらしをチラつかせると、藪のなかからピョイと出てきて、腰の剣で一閃。
今日も得意顔である。
4.
女子高生は絶望して、バナナの皮を剥いている。
どうして、スーパーフードばっかり食べてるのに太るんだろう。
雑誌のロールモデルを、今日も眺めてる。
4.
新聞紙が風に吹かれて飛んでいく。
女子高生のスカートや、太った中年男のカツラ、子供の持った風船を掠めて飛んでいく。
アッ、橋の下でホームレスが暖を取っている。
5.
やっと爆弾が完成した。
エナジードリンクの缶がデスクの周りに散乱している。
もう朝か。
6.
つらい人生だった。
思い出したら泣けてくるから、ぼくは全部を忘れることにした。
河川敷で、チャリを漕いでいる。
7.
息が苦しい。
死ぬ。
楽しかった思い出が、たくさん思い出されてきた。
8.
やれやれ、やっと自由だ。
随分とながい間塀の中にいたもんだ。
「ヤッホー」と、武林に向かって叫んだ。
9.
「それで、これからどうするの?」
「どうするもこうするもあるか! フリーダムだ! おれはフリーダムなんだよ!」
星乃珈琲で、昼下がりのひととき。
10.
うるせえこの野郎!
てやんでえ、馬鹿野郎!
夜の十三、しょんべん横丁の一角で、だれかがもめている。
11.
わたしが壁の建設に携わるようになってから、20年が過ぎた。
肺をやられて、死んでいく仲間も何人も見てきた。
今日もつるはし片手に、汗を拭っている。
12.
わたしは完全犯罪を成し遂げたのだ。
部屋は完全な密室。
わたしの代わりに捕まった可哀想な男は、自分が犯人だと思い込んでいる。
13.
奇妙な音がする。
換気扇の故障かと思ったが、どうやらこの音、わたしの胸から鳴っている。
やれやれ。
14.
ついにマシュマロ爆弾の発明に成功した。
街のマシュマロのなかに、無作為に仕掛けておく。
おまえが最後に感じるのは、柔らかな食感だけだ。
15.
くだらない。
「くだらない、くだらない」と、言っていたら、全部がくだらなく思えてきた。
布団から出るのは3時間後にするよ。
16.
鮮血がブシャーッ。
骨がピョーン。
血で血を洗う戦いが始まった。
17.
「ながいトンネルだったね」
敦子が言う。
「そうだね」
18.
縄を手繰り寄せる手が、汗で滑って、なかなか思うようにいかない。
大丈夫、大丈夫だ。
自分に言い聞かせる。
19.
足の感覚がなくなるまで走った。
すぐそばに光が見える。
もう少しだ。
20.
小鳥の声がする。
わたしは川に浮かんでいる。
なまぬるい、風が吹いている。
21.
脳の海馬を摘出する手術を受けることにした。
わたしは明日、人間を辞める。
最後にきみに会いたかった。
22.
「元気だった?」
「元気ってわけじゃないけど、なんとかやってるよ」
紗代子は目に見えて痩せたように思えた。
23.
おれは死んだことがない、おまえも死んだことがない。
軽々しく命の重みなんか語ってんじゃねえよ。
「うるせえ、考え過ぎだよ」
24.
藪のなかからニュッと手が出てきて、引っ張り込まれた。
レイプ!?
振り返ると、猫の騎士が、口元に人差し指を立てていた。
25.
月に着いたはいいが、コンビニがない。
コンビニを作ってみたが、店員がいないので、ひとりで24時間接客をすることになった。
客もいないので、楽チンだ。
26.
「愛してる」
うるさい、やめて離してよ。
「愛してる。愛してるんだ!」
27.
「力が欲しいか?」
壷の中から出てきた魔人は、そう言って鼻をほじっている。
「うるせえ、鼻ほじるのやめてくれる? 手、洗ってきてよ」
28.
やつだ。
やつがきた。
ソファーの陰から、ピョイと顔を出して、こっちを見ている。
29.
「日本武道館、ありがとうございました!」
そこで目が覚めて、無性にかなしくなった。
もう一回、夢を見よう。
30.
あいつが変な踊りを踊っている。
だんだん近づいてきて、鼻先が触れそうなところに顔がある。
そこで、人違いだ、と、気付いた。
31.
筋肉は鍛えれば必ず答えてくれるんだ。
プロテインもそう、必ず結果で返してくれるんだ。
しったことか、動くのは嫌だし金もないんだよ。
32.
初めて書く手紙だから、どう書き出したらいいか分からない。
ただ、元気かな、それだけが気掛かりだ。
でも、生きてさえいてくれればいいんだけどね。
33.
母と一緒に東京ディズニーランドに来ている。
ミッキーマウスと記念写真を撮った。
あたし、ちゃんと笑えてる?
34.
どっちもタップリ、七味をかける。
どんどん、ジャンキーな身体になってくる。
35.
「門を開けて欲しいのか?」
違う、とわたしは応える。
「この先に行きたいだけだ」
36.
うりや!
てい、よいしょ!
軽快に、なんども、なんども、おなじ動き。
37.
「あんたには分からないでしょうね!」
「じゃあ、なんで呼んだの?」
「あんたには分からないでしょうね!」
38.
さっきのキス、もっかいして。
違う。
さっきみたいな感じで、もっかいして。
39.
部屋中の鏡も窓も、全部割った。
全部割ったのに、私の顔が映ってる。
私は顔に爪を立てる。
40.
「日本一の富士山だあ! すげえよ、なんてったって、日本一の富士山だもんな!」
「やめて! いい加減にして!」
「だって、日本一の富士山なんだ! 日本一の富士山なんだよ!」
41.
かなしい、かなしいかなしい。
随分と泣いているあいだに、かなしみってなんだか分からなくなるくらい、わたしはかなしかった。
ああ、かなしいな。
42.
たまごを掻き混ぜて、いい感じに砂糖と醤油を入れて、慎重にフライパンに流し込む。
そこで、あの人のことを思い出して、わたしはたまごを焦がしてしまう。
ああ、駄目だなあ。
43.
花が咲いていた。
花瓶にいけて、大切に水を変える。
だんだんと、花は萎れていった。
44.
絶対だよ。
わかってるよ。
わかってない、絶対だよ。
45.
簡単なバイトだ。
ただし、週4以上で入れる人だけだよ。
週4が無理なら、他に行ってね。
46.
お父さんがちゃぶ台をヒックリ返そうとしたので、わたしはそれを手で制して、もう片方の拳で鼻に1発、畳み掛けるように、往復ビンタを打ち込む。
奥歯が弧を描いて飛んでいく。
「やめて! やめなさい!」
47.
隆とヤったんだって?
うそ、あんたアイツのこと好きなの?
え、うそ、最低じゃん。
48.
壁に31個目の正の字を書く。
水も食料も、もうない。
ちょっと、横になろう。
49.
やかんに跨って、激しく鞭を打つ。
「ヒャッホォ! ヒヤッホォウ! こっちこいよお! おーい、こっちこいよお!」
おれが望んでたのは、こんな幸せじゃない。
50.
リストカットの素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。
楽しい通り越して尊い。
また好きな人と一緒にリストカットしたい。
51.
時間の無駄だよ。
「うるせえな。これがおれの存在の証明なんだ」
カッコつけてるだけでしょ。
52.
ねえ。
しあわせ?
そう、わたしも。
53.
「高いね」
「そうだね」
わたしたちは、もうとっくに腹を括っている。
54.
皆殺しだって。
ああ、それ、聞いたよ。
こわいね、皆殺しだってね。
55.
ぼくはナイフを持って立っている。
額の汗を拭う。
そこで、後ろから声をかけられる。
56.
太陽に喧嘩を売るなんて、どうかしてるよ。
そうか、それならお前も、どうかしてると思うよ。
ああ、おれたちはどうかしてる。
57.
名前なんかつけるから、名残惜しくなるんだよ。
わかってたけど、わかってたんだけどね。
彼はこちらを、振り返りもしなかった。
58.
全部流されちゃった。
友達も、家族も、みんな。
あんたには分からないでしょうね。
59.
意味ない?
そんなこと、やってみなきゃ分かんないじゃん。
やらないあんたに言われたくない。
60.
「拗ねてないよ」
「拗ねてるでしょ」
「うるさい、顔突かないで。爪切ってよ」
61.
「クレープだ! 食べる? 食べるでしょ。2つください」
「何味にしますか?」
3分も考えるなんて、呆れてしまう。
62.
やっとみつけた。
新聞、テレビ、SNS、全部チェックしてた。
今度はもう、気付かれないようにしよう。
63.
あんた、自分に酔ってるだけだよ。
ちがうよ。
あたしのこと好きって言ってる、自分に酔ってるだけだよ。
64.
河川敷に腰掛けて、過ぎて行く電車を目で追っている。
夕陽が水面に反射している。
「それじゃあさ」と、わたしは話始める。
65.
戸を開けると、暗闇のなかで蹲っている影が見える。
「どうしたの?」
と、言ったら、急に甲高い声をあげて立ち上がって、こっちに向かってくる。
66.
手に感触が残っている。
まだヌメヌメする。
嫌になる。
67.
「あいつのフェラチオ最高だから。マジで、お前もヤってみろよ」
「でもなあ。おれ、お金ないし、ティファニーとか買ってあげれないよ。車も持ってないし、あんまりイケメンじゃないし、散髪行ったら変な髪型にされたし、無理なんじゃないかなあ。それにおれ、女の子と喋ったことないし。最近太ったしなあ」
「大丈夫、大丈夫だよ」
68.
なにも考えたくない。
わたしはやってない。
なんにも、やってない。
69.
ここに出口はない。
じゃあ、どこから入ったの?
あそこは入り口であって、出口ではない。
70.
生命維持装置が断続的な音を鳴らし続ける。
誰も訪れることのなくなった病室の隅の花瓶で花が萎れている。
バルーンに溜まった尿を、今日も看護師が捨てる。
71.
夢はなんですか?
言わないよ、笑うじゃん。
笑わない、笑わないよ。
72.
猫が死んでいた。
わたしはスマホで写真を撮った。
10年前のその写真を、今も持っている。
73.
いやな思い出がフラッシュバックする。
大丈夫、大丈夫、と、自分で自分に言い聞かせる。
ほんとは誰かに言って欲しい言葉。
74.
洗濯物を干す。
もう昼過ぎ。
なにをするにも、億劫だ。
75.
ミスドのコーヒーは苦くてゲロマズだ。
「ドーナツに合うじゃん」
こいつの言うことは信用しないし、わたしは、ドーナツは嫌いだ。
76.
「空っぽを感じませんか? みんな、こころに空っぽを抱えているでしょう? 大丈夫、大丈夫ですよ」
「うるせえ! ペテン野郎! ブッ殺してやる!」
「やめて、髪の毛引っ張らないで!」
77.
ドスッ。
鈍い音がして、彼は男の前に倒れ込んだ。
「まず1人」
78.
綿菓子の森に、マカロンの宇宙人が住んでいる。
今日も愉快なお茶会をしている。
おやおや、人間がひとり、迷い込んだようですね。
79.
耳鳴りがして、頭痛とともに目を覚ます。
ここはどこだろう。
部屋には、他に誰もいないみたいだ。
80.
爆音で音漏れのするヘッドホンをして、女の子が寝ている。
パンツは見えそうで見えない。
顔はそんなに可愛くない。
81.
赤いワンピースを着た女装の男が、静かな夜の街を歩いている。
人通りは少ない。
男は、下着をつけていない。
82.
「こんな遺書、恥ずかしくて読めたもんじゃない。こんなのは無効よ!」
「姉さん、カッカしないで。これが父さんの最期の望みなんだから」
作家志望の姉さんは、遺書だろうと請求書だろうと、気に入らなければすぐに難癖をつける。
83.
窓から海が見える部屋。
ずっと憧れていた。
理想よりは小さいけれど、いい部屋だ。
84.
腐ったアボカドみたいな形してるね。
どんな形か、全然わかんないよ。
腐ってても新しくても、大差ないってことよ。
85.
あいつにフライパンだけは持たせるな。
オリーブオイルもだ。
なにがあいつの武器になるか分からん。
86.
部屋に呼んだってことは、そういうことじゃないの?
そうじゃないのよ。
あの子、シリアルキラーなの。
87.
一瞬、祐一の顔が弾けたのかと思った。
爆発したのはスマホだった。
「よかった、大丈夫?」
88.
「あの星の名前知ってる?」
と、彼は言って、星の名前を教えてくれた。
「なにそれ、変な名前」
89.
生きててよかった。
ほんと、生きててよかったよ。
まさかね、生きてると思わなかったもん。
90.
電気ケトルの神話って知ってる?
海が大きな電気ケトルって話?
違うよ、電気ケトルが小さな海なんだよ。
91.
換気扇からものすごい爆音がしたので、驚いて目を覚ますした。
おそるおそる覗き込むと、換気扇の奥で、ヤバいDJがパーティーをしていた。
わたしはこわくて何も言えなかった。
92.
「マズッ! なにこれ? え、これなに?」
わたしは、彩子のやつを一口貰った。
「うわっ、マズッ! なにこれ?」
93.
分かっていましたよ。
いつからだって?
最初からですよ。
94.
何にでもポン酢をかければいいと思っている女の子がいた。
「おまえなあ」と、亮司は言った。
「何にでもポン酢かければいいと思ってない?」
95.
わたしはもう、この部屋から出ない。
出ないったら、出ないぞ。
絶対だ。
96.
やっぱり、旅がいちばんだね。
なんてったって、風を感じられるからね。
風感じてるときがいちばん幸せだわ。
97.
つつく度に、その生き物は大きくなった。
ナドロフルゲネトフスと名付けたその生き物を、わたしは飼うことにした。
こいつを研究することにしよう。
98.
かなしいか?
なんにだって終わりは来るんだよ。
時間の流れには逆らえないよ。
99.
「 」
え、いま、なんて言ったの?
「教えない」
100.
「ありがとうございます! ありがとうございます! どうか、みんながすこしでも幸せでありますように! また、いつかお会いしましょう」
夜は静かに暮れて行った。
彼の言葉は、どこかに届くのだろうか。
忘れたいことばかりだけれど
「思い出作り」というものを、したいと思ったことがない。
"良い思い出になりますよ"
"最高のひとときをあなたに"
みたいなキャッチコピーが、街にもネット上にもテレビにも、溢れているけどまったく惹かれない。
思い出って、美しいものだけなの?
と、思ってしまう。
記憶って、美しい思い出や後悔や、忘れたいことが複雑に絡み合ってて、それは切っても切り離せないものだと思う。
楽しいかった思い出とか、悲しかった出来事とか、思い出したら死にたくなるような恥ずかしいこととか、全部合わせて思い出だから。
綺麗なものだけ集めて作った作り物の思い出なんて、わたしは思い出しても笑えない。
どうしようもない人
最近、YouTubeで4ma15さんの『世迷言』という曲を、毎日イヤホンのボタンを押してリピートしながら聴いている。すごい憂鬱なメロディと、全部諦めたくなる暗い歌詞が、心地良い。
ちょっと前に、Twitterのタイムラインで、なんかネチッこいことばっかりつぶやいてる人いるなあ、なんでフォローしたんだろう、と、思ったら4ma15さんのTwitterだった。
最初は、こんなに良い曲が書けるのに、全然生活に満足してない、変な人だなあ、と思った。
でも、最近、小説を書けない日々が続いていると、なんでもうまくやれる人だったら、うまくやれない人の心に響くような作品は作れないんじゃないかと、逆説的に、開き直りのような考えに至った。
リスペクトを込めて、わたしも、4ma15さんみたいな、どうしようもない人でありたい、と、思う。
昨日、文学の師匠と電話で話して、お前みたいなやつは葛西善蔵を読め、と勧められた。
今日は12時頃に起きて薬局に行ったのだけど、それからすぐ帰ってきて、ストーブの前で寝そべってグダグダとYouTubeのお笑い動画を観ていたら、気付いたら15時過ぎになっていた。5日くらいシャワー浴びてないけど、取り敢えず外に出て、本屋でも行ってみるか、と思って家を出た。
梅田の茶屋町のジュンク堂と、阪急梅田駅の紀伊国屋に行ったが、両方とも葛西善蔵の『子をつれて』という本はなくて、絶版になったようだった。
ジュンク堂で偶然みつけた西村賢太の『小説にすがりつきたい夜もある』という本に、葛西善蔵論が載っているらしかったので、最近Twitterで知り合ったしいなさんが好きと言っていた舞城王太郎の『阿修羅ガール』と、新潮新人賞の審査委員の中村文則『私の消滅』と田中慎弥『共食い』を、西村賢太以外の3人は読んだことなかったので一緒に購入した。葛西善蔵の本は絶版なので、取り寄せることもできなかった。青空文庫にあるみたいだから、あとで読んでみようと思う。
18時くらいから、茶屋町のポパイに入って、3時間くらい西村賢太と舞城王太郎とTwitterを回しながらちょっとずつ読んでいる。
西村賢太の『小説にすがりつきたい夜もある』に入っている「凶暴な自虐を支える狂い酒」という文章が、葛西善蔵論で、短い文章なのですぐ読めて、葛西善蔵の人となりをザックリ知ることができた。
葛西は、小説を全然書かず、酒浸りで、すぐに暴力を振るい、金を借りてる相手にもグタグタと文句を言う人だったらしい。
4ma15よりどうしようもない人だなあ、と思った。
だが、あの西村賢太(も、まあどうしようもない人だけど)が、この5人だけが私小説作家と認める作家だと、書いているなかの一人が葛西善蔵である。
4ma15さんの音楽も、ある意味私小説的で、どうしようもない人じゃなきゃ書けないものなんだろう。
やっぱり、わたしも、どうしようもない人でありたい、という気持ちが強くなった。
どうしようもない人はどうしようもない人で、どうしようもない人にしか作れない芸術を作ればいい。
そう思うのでした。
弱い人間の自己肯定
白紙のノートに向き合って、なんで書けないんだろう、と思う時間が増えた。
なにがしたいんだろう?
なにを書きたいんだろう?
と、思ったときに、自分が表現したいのは、楽しいとか、幸せとか、そんなものじゃなくて、生きることの辛さとか、だれにも理解してもらえない孤独とか、そういうものから産まれる血の滲むような文章なんだと気付いた。
文学に触れている時間が楽しくて、スラスラと文章を書ける人間もいると思うし、そういう人を否定するわけじゃないけど、わたしはそういう人間にはなれないなと思う。
わたしが書きたいのは、うまくいかない人の一隅を照らすような小説で、わたしがなんでも卒なくこなせる人だったら、そんな文章は書けないんじゃないだろうか。
自分のなかの理想像を追い求めて、苦悩して、結局死ぬまで理想は叶わないくらいでいいと思う。
すこしずつ、苦しんで、考えながら小説を書けばいい。
きみは天才だ
日本武道館で、3時間かけて自分の一編の小説をワンマンライブで朗読して、それを全国の映画館でパブリック・ビューイングで上映したい。
わたしには才能がある。
そう思うようになったキッカケは、とても些細なこと、些細な言葉からだった。
「きみは天才だ」
と、昔女の子に言われたから。
他の誰の言葉よりも、わたしはその子の言葉だけを信じる。たとえそれが勘違いだとしても、死ぬときになってみなきゃ分からないし、別にどっちでもいい。
初めて人に認められた気がして、嬉しかったから、その言葉を嘘にしたくない。
「きみは天才だ」
って言われたときから、わたしは天才になった。エミネムの歌詞によく出てくる「おれはスーパーマン」みたいな感じ。
わたしは天才だから、その才能を100%発揮できるステージで表現したい。デッカい大砲持ってたら、ブッ放してみたいと思うのが自然だ。だから、いつか日本武道館でワンマン朗読ライブしてやる。
小説を書くのはしんどいけど、好きな女の子に褒めてもらえるなら、死んでもやる価値はある。モテたいとかじゃない。わたしを天才と呼んでくれる人に、ちょっと褒めてもらえれば、できればメチャメチャ褒めてもらえれば、それだけでいいんだ。
そう、もう一度言うが、わたしが小説を書く理由はとてもシンプル。好きな女の子に、「きみは天才だ」って言われたから。
もう一度褒めてもらいたいとかじゃない。
もちろん、褒めてもらえれば嬉しいけど。
最初の一回。
「きみは天才だ」
が、永久機関のエンジンみたいに、永遠にわたしを突き動かす力を持ってた。
いま取り掛かってる小説は、まだタイトルとテーマしか決まってないけど、絶対書き上げてやる。
わたしは天才だ。